中央電気倶楽部 平成22年度 第3回公開講演会 参加報告
幹事 日笠 賢(昭55経 四條畷学園勤務)
掲題講演会に参加して来ましたので、下記に報告します。
記
日 時:2010年9月30日(金) 15:00~16:30
場 所:(社)中央電気倶楽部5階ホール
講 演:松井 孝典(まつい たかふみ) 氏 東京大学名誉教授 理学博士
千葉工業大学惑星探査研究センター所長

演 題:『宇宙と生命』
出席者:約100名(主に中央電気倶楽部会員)
【講演会内容】
松井先生は、東京大学大学院新領域創成科学研究科の教授を最後に、2009年に東京大学をご退職され、現在は千葉工業大学が先生のために新設したような惑星探査研究センターの所長をされています。ご専門は、惑星物理学、アストロバイオロジーですが、政府の宇宙開発戦略専門調査会委員や宇宙開発有識者会議の座長も務められ、「宇宙誌」(徳間書店)、「松井教授の東大駒場講義録」(集英社新書)、「われわれはどこへ行くのか」(ちくまプリマー新書)などの著書、またNHK「地球大紀行」等へのテレビ出演も多く、宇宙から地球、生命、文明と大きなスケールでお話を展開される現代の知の巨人のおひとりです。今年の3月には、6550万年前の恐竜の絶滅がユカタン半島近辺への隕石の衝突によるものであったことを結論付ける論文を科学雑誌「サイエンス」に執筆者の一人として載せられるなど、益々ご活躍中です。今回の講演では、「はやぶさ」の帰還と次の「はやぶさⅡ」が目指すもののお話から始まり、地球の未来、生命の定義、他の惑星への生命探査と、興味深いお話が次々に展開されて、大変充実した1時間半でした。
その中からいくつか要点をあげると、
〔「はやぶさ」の帰還と宇宙観〕
・21世紀を目前にした1999年にNASAが宇宙における生命の探査をすると宣言し、現在はヨーロッパ中心に30カ国でアストロバイオロジーの研究所が出来て研究が進んでいる。
・残念ながら、日本ではアストロバイオロジー研究所は未だ設立されてはいない状況だ。
・「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から持ち帰った物質は、太陽系の起源を解き明かす可能性を秘めるが、この成功により、次の「はやぶさⅡ」計画では有機物が含まれるかもしれないC型小惑星をターゲットにすることが、宇宙政策本部で認められることとなった。
・宇宙には太陽系即ち惑星の世界に星が2千個近く、またそれを包む銀河系と、更にその外側に銀河の世界が広がっており、膨大な銀河にはとてつもない星の数がある。
・この中で生命がいることが確認されているのは、今のところ、地球上のみである。
・19世紀までは宇宙のことは殆ど何もわかっていなかったが、20世紀になってハッブルの観測で宇宙が膨張していること、宇宙に始まりがあることがわかり、太陽や地球の年齢もわかるようになった。
・最近の10年でわかって来たことも多い一方で、未だわからないことも山のようにある。
〔地球と人類の過去、現在、未来〕
・ヒトという生物種ができて700万年になるが、現生人類が狩猟採集から農耕牧畜に移行し、地球環境に他生物と同じレベルで影響を与えていたそれまでの『生物圏』から離れて地球の物質やエネルギーの流れを変えてしまう独自の『人間圏』を作ったのが、1万年前の「文明」の始まりである。
・その『人間圏』が更に「産業革命」で、自然から得られるものを越える駆動力を持ち、活動範囲を急拡大した結果、地球環境を急激に変え始めている。
・20世紀におよそ15億人だった世界の人口は60億人になり、日本列島の人口も明治以降に3千万人から1億2千万になった。
・現在の1年は、地球が『生物圏』だけであった時代の10万倍かそれ以上に相当する速度に匹敵し、今はまさに加速度的に『人間圏』は終焉に向かっていることになる。
・太陽が1億年に1%くらいの割合で明るくなり続けているために、地球が今の生命の惑星でいられるのは、あと5億年、即ち5億年後には地球から生物圏が消える。
・その後に、地球上から海が蒸発してしまうのが10億年後である。
・最終的に、地球そのものが太陽に飲み込まれるのが50億年後と想像される。
・地球の観点からすれば現在は歴史の折り返し点で、これから歴史を逆にたどるだろう。
〔宇宙における生命の探査ともうひとつの地球の可能性〕
・生命とは何かということに関しては、我々は今のところ地球上の生命しか知らず、唯一分かっていることは、生命は海の組成と良く似ているということである。
・火星探査では、海の存在が推測されるものが多く見つかっており、生命の可能性が示唆される。
・土星の衛星であるタイタンには、太陽系で唯一、地球と同じ窒素の大気があり、また、メタンの雲や雨、湖があることから、そこに生命がいても不思議ではない。
・木星の衛星エウロパも、タイタン同様に地表が氷におおわれ、ガリレオ探査で海が存在するらしいことがわかっており、岩石部分は生命誕生の必要条件が満たされていると考えられるため、2015年にNASAが超大型ミッションを予定している。
・太陽系探査のみならず、銀河系スケールでの生命探査も10年以内には始まるだろう。
【感想】
地球の未来に関し、「『人間圏』が今のままの文明の膨張を続けると、あと100年持たないでしょうね。」と、松井先生がサラリとお話になった時には流石にドキッとしました。
講演会当日の日経朝刊に、日本の赤外線天文衛星『あかり』の観測データなどから、東大のチームが「星の生産工場」を発見という記事と、国際宇宙ステーションでの日本実験棟『きぼう』からの観測で、ブラックホールの解明に繋がる「X線を放つ新星を発見」という記事が載っています。この分野における日本人の活躍や貢献は、実に立派なものです。
10月1日付日経朝刊は、太陽系外の20光年の距離に「生命存在の可能性のある、地球に最も似た惑星」をNASAが発見したと伝えています。人類の未来への存続にために、今まさに死に物狂いで宇宙の観測と研究がなされていることを改めて認識しました。
教育に係る仕事をしている身として、もう地球上の世界に留まらず、宇宙やその先に眼を向ける時代になっていることを子供達にしっかり伝え、期待していきたいと思います。

