大阪京大クラブ 平成22年総会 及び9月例会(食事会・講演会)参加報告

 

幹事 日笠 賢(昭55経)
 

掲題会が下記の要領にて開催され、白井代表幹事、菊池代表幹事、沖野事務局長とともに参加して来ましたので、報告します。


日 時:2010年9月10日(金)
    総会17:20~17:50、
例会18:00~20:00

場 所:(社)中央電気倶楽部3階食堂

講 演:阿辻哲次 氏(京都大学大学院 人間環境学研究科 教授)

演 題:「現代社会と漢字」
 
 

 

出席者:約70名(関西東大会から今回は4名が参加)


【総会】

大阪京大クラブは1953年9月に発足したことから、9月が新年度初めで、今回総会が開催されました。鈴木会長のご挨拶の中で、今年の新年祝賀会に来賓でご出席いただきながら、去る9月3日に亡くなられた西島安則元総長に、まず全員で黙祷が捧げられました。事業報告では、昨年度23名が新規加入の一方で退会も23名あり、会員数は282名で変わらずとのことと、会員のうち法学部卒が4割を占め、若手や女性の会員が極めて少ないことが課題であると話されました。わが関西東大会との関係では、相互交流が2007年度の後半に始まり、継続的に意見交換・相互見学が実施されていることが紹介されました。役員改選では、関西東大会との縁も深く昨年ご講演もいただいた山内潤三氏が、副会長をご退任になり、北野病院元院長の高月清氏が新副会長に就任されています。決算予算等の審議事項や今年度の例会予定の発表などの後に、例会の食事会と講演会に移りました。
 

【例会】

今回初参加の町田勝彦シャープ会長、村山敦関西国際空港相談役ほかが紹介されました。食事会の中で白井代表幹事が町田会長に、関西東大会として9月3日にシャープ堺工場への見学会をさせていただいたことのお礼とご挨拶をされました。

 
【講演会: 阿辻哲次 先生】

阿辻先生は、京都大学の人間環境学即ち文科省方針で再編された従前の教養部の教授で、ご専攻は中国文字文化史ですが、一方で政府の文化審議会国語委員会の委員も務められ、著書やゲームソフト監修、またNHK等テレビ出演も多く、最近の漢字ブームの中心人物のおひとりです。ご実家が活版印刷業だったということで、幼少時代から漢字に親しむ環境にあり、爾来漢字学者としての見識は深く、興味深いお話が次々に飛び出して、分かり易くかつ大変楽しい1時間半でした。いくつかの要点をあげると、


   
敗戦により、GHQの日本語ローマ字化方針で漢字は「廃止すべき悪魔の文字」となり、また日本の進歩的文化人にも漢字廃止論や漢字制限論を唱える者があって、1946年に将来の廃止を視野に入れ暫定的に「当面の間使用すべき漢字」である1850字の『当用漢字』が制定された。


   
現在、日本で政府が決めている漢字の規格は三種類ある。


   
第一が、上記『当用漢字』に95字を純増して1981年に制定された「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安」としての『常用漢字』1945字。(文部科学省所管)このために「剥奪⇒はく奪」とか「拉致⇒ら致」や「口蹄疫⇒口てい疫」という混ぜ書きが公文書に書かれることになった。現在の学習指導要領では、常用漢字でないものは読めなくてもよいことになっているために、大学入試問題でも例えば、「(あらし)(やみ)夜に(おれ)を訪ねて来たのは(だれ)だ」などと常用漢字では無い字に読み仮名を書かなくてはならないことになっている。また動植物は片仮名で書くことになっているため、亀、熊、虎、鹿や、梨、藤などが常用漢字から外れている。都道府県名にある阪、奈、岡、阜、埼、茨、栃、媛も含め、現在196字を追加の常用漢字とすべく、阿辻先生もメンバーである文化審議会が、2010年に最終答申をしている。


   
第二が『人名用漢字』で、当初当用漢字の範囲に含まれない漢字は新生児の名前に用いるべきでないとされていたものが、1951年に92字を人名用漢字として新たに指定したもの。その後個別の裁判等を経て順次増加し、現在は985字に(法務省所管)。


なお、日本国籍に子の名として使える文字は、常用漢字と人名用漢字、片仮名、平仮名など戸籍法で限定されており、ローマ字やハングル、アラビア文字などは使用できない。一方、読み方は自由であるため、「一二三」と書いて「ワルツ」ちゃんや、「騎士」と書いて「ナイト」ちゃんという届出の実例がある。


   
第三がJIS漢字で、工業製品で使うためのコードの6355字(経済産業省所管)。この中にある「拡張新字体」には、「森鷗外⇒森外」や「瓢簟山⇒瓢山」「冒瀆⇒冒」など、字の元来の形が変わってしまった奇妙な文字も幾つか作られている。

 
【感想】

日本の漢字が「悪魔の文字」とされた理由のひとつが、覚えるのが大変で、機械(26文字で済むタイプライターなど)では対応できず、新時代の進歩に馴染まないとされたことがあったようだが、キーボードや携帯電話などによる現在の漢字変換文化は、全く想像できなかったであろう。漢字は書けなくても、正しく変換したり、意味が分って読めれば良いという時代になり、今後はむしろ多くの日本人が漢字を勉強し、また活用されていく流れにあるような感想を持った。


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